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Research topics

生態系の発達と微生物群集

 「あとは野となれ、山となれ」。火山噴火や氷河の後退によって新たに姿を現したむき出しの大地も、やがて植物が定着し、時間をかけて成熟した生態系へと発達していきます。このような変化を一次遷移と呼び、古くから生態学者の関心を集めてきました。何十年、何百年、何前年とかけて移り変わっていく生態系を一人の研究者が調べることは難しいですが、年代の異なる複数の場所を観察・比較することで、生態系の発達過程をある程度想像することが可能です。世界中の様々な場所で、生態系の発達(一次遷移)に伴って植物がどのように移り変わっていくのかが調べられ、それには遷移に伴う光環境の変化に加えて、土壌中の養分の蓄積が重要な要因であることが分かってきました。

 人の目につきやすく取り扱いが容易な生態系の地上部と異なり、遷移に伴って生態系の地下部がどのように変化していくのかについての研究は遅れています。遷移に伴って土壌微生物たちはどのように変化していくのでしょうか。また、地上部(植物)の遷移に重要な養分の蓄積を考える上でも、有機物分解や土壌生成を担う土壌微生物群集の変化を明らかにする必要がありそうです。我々は、様々な一次遷移系列や環境傾度に沿って、土壌微生物群集の量や質がどのように変化していくのかを調べています。

 私たちはまた、微生物群集の量や質を決めている大きな要因として、「基質制限」に着目しています。従属栄養性の土壌微生物は、自身の体の材料(炭素や窒素、リンなど)を外の世界、すなわち他の生物が作り出した有機物に求めなければなりません。したがって、土壌中に十分な有機物が無ければこれらの微生物は増殖することができません。また、有機物が量的にたくさんあったとしても、微生物細胞を構成する元素の比率と、その材料となる土壌中の有機物における元素の比率は必ずしも一致しているわけではありません。この「元素のアンバランス」によっても、微生物はその活動や増殖を制限されることになります。これが「基質制限」であり、このように生態学において複数元素(例えば炭素・窒素・リン)の量的バランスに基づく考えを「生態学的化学量論 Ecological Stoichiometry」とよんでいます。私たちは野外調査や室内実験を組み合わせ、土壌微生物群集の発達と、生態学的化学量論に基づく基質制限との関係を調べています。

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