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Research topics

生態系における炭素・窒素循環

 炭素は生物の体や有機物を構成する最も基本的かつ重要な元素です。大気中の二酸化炭素は光合成によって生態系内へと取り込まれて有機物となります。この炭素は様々な経路を通って生態系内をめぐり、やがて微生物による分解(無機化)を受けて再び二酸化炭素となり、大気へと戻っていきます。この炭素の動きを理解することは、生態系内のエネルギーの動きを知ることであり、そこに生きる生き物の生きざまを知ることでもあります。生態系の種類や構造が違えば、炭素循環の様子やその量もまた異なります。また、仮に同じ生態系でも日が違えば、季節が違えば、そして年が違えば、循環する炭素の量も違ってくるでしょう。

 また、植物の光合成や成長速度を制限している要因の1つが窒素です。窒素は大気中の79%を占めるありふれた元素ですが、植物がその成長のために吸収する窒素は主に土壌中の無機態窒素(硝酸態窒素やアンモニア態窒素)です。大気と生態系の間で大量にやりとりされる炭素と違い、窒素の大気との交換経路は、限られた生物による窒素固定や脱窒といったものに限られます。したがって、植物の光合成や成長を考える上では、生態系内で生物が利用できる窒素がいかにリサイクルされているのかを考えることになり、有機物(有機態窒素)を分解して無機態窒素を土壌に供給する役割を果たす土壌微生物の存在が非常に重要となります。

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私たちは森林生態系を中心に、様々な生態系において炭素や窒素がどのように、どれだけ循環しているのか、そしてそれを駆動している植物・動物・微生物の働きがどうなっているのかに興味を持って研究を行っています。

 気候変動の危機が叫ばれるようになって以来、大気中の二酸化炭素濃度は人類の大いなる関心事の1つとなってしまいました。炭素循環の重要な一部を担うこの分子にも、やはり炭素が含まれています。地球規模で見れば、生物圏と大気圏との間で光合成や呼吸によって自然にやりとりされている二酸化炭素の量は、人類が人間活動によって放出している二酸化炭素量をはるかに凌駕しています。このことは、自然生態系の炭素循環のバランスのわずかな変化が、地球の気候に大きな影響を与えていることを意味しています。したがって、炭素循環を考えることは気候変動を考えることでもあります。私たちは生態系の正味の炭素収支(生態系純生産量 Net Ecosystem Production: NEP)を測定・推定することを通して、大気中二酸化炭素濃度、ひいては地球の気候の調整に生態系が果たしている役割の理解に努めています。

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